WTO加盟に伴う中国外資法律の整備


文章の発表時間:2003-12-15 10:57:01

 外国投資に関する中国法律として、主に《中外合弁経営企業法》、《中外合作経営企業法》、《外商投資企業法》およびそれぞれの実施条例を中心としたいわゆる「三資企業 (中外合弁、合作、独資) 法」が挙げられる。WTO加盟に伴い、中国では、外国投資に関する法律について以下の修正・補充が行われるものと考えられる。

 外資企業の待遇について

  現在、中国で外資企業が享受している待遇は、内資企業を基準にして比べると、税制、資本金投入、輸出入権などの「超内国民待遇」と、投資分野や国内販売の制限、輸出実績の要求などの「非内国民待遇」に分けられる。 しかし、WTO規則のひとつである「貿易関係投資措置協定」(TRIMs協定)第1条において、GATTの内国民待遇と通常の数量制限廃止の原則に合致しない投資措置を実施してはならないと定められている。そこで、WTO加盟を目指して、外資企業への待遇を以下のように改正することによりTRIMs規定に合致させ、また市場経済に要求される平等な競争環境を作る動きが出てくると考えられる。 

 1.非内国民待遇条項の廃止  

 例えば、《合弁企業法》第9条、《合弁企業実施条例》第57、75条、《合作企業法》第20条、《合作企業法実施条例》第57条、《外資企業法》第18条、《外資企業法実施条例》第45、47、56条などのような条項は、WTO加盟に伴い削除されるだろう。また、外資に関する審査と許認可手続がもっと簡素化されるだろう。

 2.外資優遇税制を段階的に廃止へ 

  WTO加盟に伴って税制上の内国民待遇が実施されれば、外資企業の税制優遇は廃止されることになる。但し、ここで注意を要するのは、外資企業に対する税収面の優遇措置がWTO加盟後直ちにすべてなくなるわけではないということである。つまり、外資優遇税制は、今後ある程度の時間をかけて、外資企業の利益および税制混乱の回避などを考慮しながら徐々に減らされていくことになるであろう。 所得税の優遇については、一定の分野や特定のプロジェクトにおいて引き続き残るだろう。また、内資企業も外資企業と同様にこの優遇を受ける。 

 3.資本金について 

  現在、中国における三資企業と内資企業(有限公司)は、資本金の面でいくつかの違いがある。

 (1)内資企業の場合、登録資本金は設立時にすべて払わなければならない。これに対して、三資企業の場合は、設立後一定の期間内に一括または分割で払うことが認められている。これはまさに三資企業に対する超内国民待遇の一つである。

 (2)内資企業の場合、最低資本金の定めがあるが、三資企業の場合はその定めがない。

 (3)内資企業の場合、資本を減少することができる。これに対して三資企業の場合は減資ができない。これは三資企業に対する非内国民待遇の一つである。 資本金については、WTOに加盟した後は、おそらく会社法に一本化されるものと考えられる。即ち、三資企業は設立時に登録資本金をすべて払わなければならなくなり、最低資本金も要求されるようになり、逆に減資ができるようになるであろう。また、株式会社には日本のような「授権資本制」が導入されると考えられる。 超内国民待遇については、内資企業に外資企業と同様の待遇を与えることによって解決を図るものと思われる。例えば、内資企業の輸出入権は、現在、審査・許可制から登録制に移行しつつあるが、将来は完全な登録制にかわるだろう。このような措置によって、超内国民待遇の壁が低くなる。

 投資分野の拡大について 

 WTO加盟に伴い、中国においては段階的に市場を開放していく義務と責任が生じる。特に、銀行、保険、証券、電信、流通、AV、自由業、観光などのサービス業への市場アクセスが緩和される。そして、三資企業法および実施条例にあるサービス業などへの投資制限条項が廃止され、《外商投資産業指導目録》も修正されるだろう。また、サービス業は最も法律が整備されていない分野なので、その関連法律も制定されるだろう。 

 投資形態の拡大について

  これまで、外国からの直接投資は主にいわゆる「三資企業」の形態で行われてきた。今後はWTO加盟に伴い、投資分野のさらなる開放と規制緩和によって、三資企業以外の投資方式が増えると予想できる。この新たな投資方式とは即ちBOT、外資によるM&A、フランチャイズ、株式投資である。これらに関する法律の整備も不可欠であろう。 

1.BOT

  BOT(Build-Operate-Transfer)経営はインフラ建設によく用いられる。中国では、90年代初めにBOT経営方式が導入されたが、BOTに関する規則は2つの通達だけであったため、効力レベルが低く内容が単純で運用しにくいなどの問題があるほか、BOT方式が外商投資にとって障害となる場合が実在する。また、「外商投資産業指導目録」によると、ローカル鉄道、橋梁、地下鉄、港湾、空港などの分野でのBOT方式適用は実際には不可能である。  インフラ建設の進展、特に西部大開発の展開につれて、BOT方式による外国投資が増えていくと思われる。そうなればBOTに関する法律が必要になるだろうし、近いうちに制定されるだろう。この法律には以下の内容が含まれると考えられる。即ち、外資が参入できるBOTプロジェクトの範囲、その参加資格、BOTの管理機構・審査機構、入札・審査・批准の手続、政府による保証の内容、運営上の管理、期限満了後の移転、奨励の措置、紛争の解決などである。

 2.外資によるM&A 

  1990年代以降、外資による中国企業の合併・買収という現象が起こり始めた。しかも、外資によるM&Aを行ったのは大手企業だけではなかった。中でも最も注目を浴びたのは中策公司によるM&Aである。インドネシア資本の中策公司は91−93年までの2年間に、30億余りの人民元を使って、200余りの国有企業を買収し、バミューダで登記した持ち株会社の名義でニューヨークとオタワに上場し、その資産規模は急速に拡大した。 

 中策公司の成功は、ある意味では中国のM&Aに関する法律の不備にのって収めたものであるともと言える。M&Aに関する中国の法律は散在的で単純すぎて、完全に整備されていない。この「中策現象」から考えても、M&Aに関する法律について、資本金投入に関する優遇措置や国有資産の評価の問題、独占禁止法・不正競争防止法の欠如、M&A手続が不明瞭であるなどの各種問題点がある。  こうした問題を解決するため、近い将来、M&Aの種類、契約の内容、手順、審査・認可の基準、情報の開示、敵対買収に対する防衛、準拠法の確定、紛争の解決などが含まれた法律が制定されるだろう。 

 3.フランチャイズ

  近年、中国ではフランチャイズ・ビジネスやチェーン・ストアが増えていて、外国企業(例えば、ローソンなど)も進出しているが、外資企業に対し、出資比率、地域、フランチャイズ形態などに制限がある。WTO加盟や流通業のさらなる開放につれて、外資によるフランチャイズ・ビジネスは新たな投資形態として増えてくるものと考えられる。外資によるフランチャイズは契約法、競争法、知的財産法、外資法とかかわっているが、フランチャイズ特有の性質に着目して設けられた条項はほとんど存在しない。フランチャイズ・ビジネスの増加につれて、フランチャイズの登録の必要性、フランチャイズ契約の具体的内容とその解除と更新、契約満了後の競業避止義務の有無、クーリングオフ制度、不正競争との関係などを含んだフランチャイズ関連法律が制定される可能性が高い。

 4.株式投資

  現在外国投資家向けのB株があるが、A株(人民元株)市場への参入はできない。また、上場企業の株の中に相当量の流通できない国有株や国有法人株がある。WTO加盟に伴い、外国投資家のA株市場への参入が緩和され、非流通株も段階的に減っていくものと思われる。また、ナスダックのような第二ブロックの市場が年内に成立の見込みであり、この市場への参入は自由であるとのことである。これらに関する規則も修正・制定されるだろう。 

 統一的な外商投資企業法が制定される公算が大きいこと

  既存の三資企業法は外資企業の形式に着目して制定されたもので、いくつかの問題がある。

 (1)三つの企業法の構造が類似していて、内容的に重複する部分が多い。

 (2)三つの企業法があるにもかかわらず、三資企業において、所得税、労働管理、会社登記などがすでに統一されている。また、享受する待遇も同じである。

 (3)内国民待遇の要求からも、企業形態、設立、資本金の投入などについて、外資企業と内資企業とを同じくすべきである。 

 以上の問題を解決するには、中国では次の主張が次第に有力になってきている。即ち、既存の三資企業法を廃止し、統一的な「外商投資企業法」制定すべきであるという主張である。その法律において主に外商投資分野、外商投資の審査・批准、外資の待遇、外資の保護、紛争の解決などの内容を含ませ、外商企業の形態、内部の組織機構、設立、出資、経営管理などに関する内容については内資企業と同様に《会社法》、《労働法》などの法律によって規制するべきであるとしている。中国の情況からみれば、中国当局がこの主張を取り入れて統一的な外商投資企業法が制定される公算が大きいと考えられる。

 

 

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